許可をいただきましたので、最近のセッションケースをご紹介致します。
このセッションのテーマは
「ほとんどのものに疑ってかかる」原因を探求して解放することです。
クライアントのAさんは、
何に対しても疑いをもってしまう傾向に気付いておられました。
何に対しても疑いを持ってしまう傾向は、
場合によっては人間関係の信頼感を損ない、
物事に対して神経質になり、心配、不安、緊張感などが増え、
余計なエネルギーと時間を費やすことにもなりかねません。
人間関係においては、
相手に安心感を持つことがなかなか出来ず、
打ち解けるまでにはさまざまな段階を踏むこととなるでしょう。
敏感な方は、相手が自分を信頼してくれているか否かについて、
感覚的に分かってしまうものですので、
疑いや不信感によって第一印象が悪くなることもあるかもしれません。
こうした疑いや懐疑、不信には、必ず原因となった出来事があります。
多次元セラピーでは、ブリッジなどの方法を使って
その起源である時空へ退行していきます。
現れたのは、ある風景でした。
一面の焼野原… 13歳くらいの少女が立っています。
汚れている緩いモンペを身に付けて
何をするでもなく、そこに佇んでいます。
その場所は、少女にとってなじみのない場所でした。
「自分がどうしたらよいのかわからない…」
「ここがどこなのかわからない…」
なぜ自分がそこにいるのかもわかっていない様子です。
周囲には人の気配は全くありません。
焼野原の中にいるにもかかわらず、
少女は怪我をしておらず、空腹や渇きも全くありませんでした。
やがて彼女は歩き始めます。
とりあえず休む場所を見つけるために…。
この少女は、既に亡くなっているらしいことがわかってきました。
亡くなった後、自らの死に気付かずにさまよっていたのです。
この少女がどのように亡くなっていったのか、
さらに退行を続けていきます。
すると現れたイメージは、卓袱台を前に座っている幼い女の子。
まだ5歳くらいです。
家の中にたった一人で、母親が帰宅するのを待っています。
「お母さんが早く帰ってくるといいな…」
周囲は静かで何の物音もしていません。
女の子は心細い気持ちでいっぱいでした。
その子は、家から出ることなく、
おとなしく待っているように母親から言われていました。
母親は働きに出ていました。
この子の父親は、早く亡くなっており、
母親と二人暮らしであり、身寄りはほかにありません。
ご近所には、民家がまばらで、
親しく付き合いをするような人は住んでいませんでした。
いつまで経っても、母親は帰ってきません。
それでも女の子はずっと待ち続けていました。
突然、空にあちらこちらから飛行機が現れて、爆弾が投下され、
火が燃え広がり、たちまち村中は火の海となりました。
広い範囲で燃え続けています。
人々は逃げ惑い、女の子の家の中にも煙がどんどん入ってきます。
天井が崩れ、周りの壁も崩れ落ちてきます。
それでも女の子は逃げません。
お母さんが出かける前に「ここにいて」と言い残していたからです。
「この場所を動かずにいれば、お母さんがきっと迎えに来てくれる…」
「外へ逃げたら、お母さんに会えなくなってしまうかも…」
燃え盛る炎が迫り、家はつぶれて煙に覆われ、女の子はそのまま、
その場所で死を迎えました。
子どもには、大人のような判断力や理解力、経験値などがありません。
そのために、大きな戦争が起こっていて、命の危険が迫っていることが
この女の子には分からなかったのです。
女の子は、母親の言葉を信じて待ち続けたのですが、
母は戻ってきてはくれませんでした。
最期を迎えた時、この子が感じていたのは
大好きなお母さんのことを心の底から信じていたのに
お母さんは迎えに来てくれなかったということ。
幼い女の子にとっては、打ちのめされるような衝撃だったはずです。
その刹那にこの子が下したであろう決断は、
「もう信じられない、誰のことも信じない…」というものです。
多次元セラピーでは、こうした決断は、その後の転生にまで持ち越され、
潜在的な信念となって、行動や思考全般に大きな影響を与えると考えます。
影響下にありながら、その信念や決断がなぜ在るのかは
ご本人には自覚が出来ませんし、
そのような信念・決断が在ることにすら気付かないことも多いのです。
この前世は、現在の東京都内の下町のあたり、
おそらく第二次世界大戦中のことです。
女の子は、焼け跡をさまよっていました。
すなわち自分の死を自覚できないまま、
癒されるのをずっと待ち続けていたことになります。
セッションでは、この後、この女の子を救いだして、
精神、感情、身体のあらゆる面から十分に癒していきます。
子どもは、大人以上に傷つきやすいものですので、
インナーチャイルドワークと同様に、
配慮を持って丁寧に対応することが求められます。
この出来事は、女の子にとって深刻なトラウマとなり得ますが、
母親にとっても、それを上回るほどの不幸な体験となることでしょう。
我が子に会うこともかなわず、子どもを案じながら、
母親も仕事先で爆撃に遭い、命を落としています。
幼い子どもを守れなかった罪悪感や後悔、自責の念は、
はかり知れないものがあります。
母子が十分に癒されるために、二人が安全な場所で
再び会えるように誘導していきます。
帰宅出来なかった事情を女の子に説明して謝罪することは、
母親に心の安らぎをもたらすためにはどうしても必要なことですし、
女の子にとっても必要な癒しとなります。
そうなることによって、あの前世でのトラウマ的な死の瞬間に下した決断は解放され、
女の子は、基本的な信頼を取り戻すことができるようになっていきます。
「何に対しても疑いを持ってしまう」ことの背後には、
たった一人の相手(母親)に対する無条件の信頼と、
それが裏切られた強烈なショックがありました。
死の直前のほんのわずかな疑いが、
これほどまでに長く残り続けることとなったのは、
あらゆるものの中で最も大切な存在であった
母親に寄せていた信頼のためであることは
言うまでもありません。
この前世の母親は、現在、転生しておらず、
妻子を残して早死にしてしまった父親は、
このクライアントさんの現在のお父様であるということです。